築80年のコンバージョン

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東京の人情あふれる下町エリアを走る路面電車、都電荒川線の終点駅がある三ノ輪。
2015年10月、商店街「ジョイフル三ノ輪」の一角に、周囲とは趣を異にしたガラス張りのゲストハウス&ホステル『Sato sanʼs Rest』が誕生しました。

この商店街は大正時代に発足し、当時は「南千住銀座」と呼ばれるほど賑わいましたが、現在はシャッター街化が進み、建物の老朽化が問題となっています。

「ジョイフル三ノ輪」には地元で愛されるおでん屋さんがありました。周囲に惜しまれ閉店した後、1階テナントに次の入居者が入ることはなく、かつ、2階住居部分は老朽化が進み、人が住める状態ではありませんでした。この土地の借地権も満了となり、地主である事業主Aさんが建物ごと買い取ることになりました。

建物は築80年。建物を解体し更地にして売り地にすることもできます。修繕あるいは建て直しをして有効活用を考えることもできます。でも、Aさんはどうしていいのかさっぱり分からない状態でした。そのような時に、Aさんはトチタテモノに出会ったのです。

このページでは、この老朽化した空き家物件から、人々が集うゲストハウス『Sato sanʼs Rest』が誕生するまでの秘話を紹介します。

築80年の老朽化した空き家物件

通常のテナント誘致では商店街活性化は難しい状況でした。

旅行者が便箋などを購入するそうで、仕入れを増やしたそう。

周りのお店では英語のメニューを用意してくれたりしています。

{Sato-san's Restができるまで}

Sato-san's Restのコンセプト立案までの流れ

トチタテモノでは、事業主だけでなく、不動産会社、入居者、商店街などの周辺地域の人々や、関係する人々の生の声を現場に出向いてヒアリングし、それぞれが抱える課題を抽出します。
そこから、リフレーミング(課題解決に向けてさまざまな角度から模索すること)を行い、コンセプト(具体的な案)を決定し、建築的解決を図ります。

事業主Aさんのホンネ

  • 荒れ放題で空き家状態が続いているのを何とかしたい
  • 空き家の放置は不法占拠や放火のリスクがあるので心配
  • 建て直しをした方がいいとは思うものの、できればお金をかけたくない
  • 建物は1階2階が続きになっている構造。2階だけ貸し出すことは難しいので1、2階を全て借りてくれる入居者を見つけたい
  • お金をかけて修繕・建て直しをするなら、長期に安定した収入を得られる物件にしたい
  • 空き家対策を講じなければ行けないが、具体的に何が最適なのか分からない
  • 生まれ育った街なので、商店街の雰囲気を壊さずに活性化に貢献したい

事業主

事業主

地元不動産会社B社のホンネ

  • 空き家が多くなった商店街に集客できる入居者を呼び込みたい
  • シャッター街化した商店街では、正直、テナント誘致は難しい
  • 老朽化した物件が多く、倒壊など管理上の負担を軽減したい
  • 地元密着の不動産会社として、商店街の役に立ちたい
  • 付き合いの長い地主(事業主Aさん)の役に立ちたい、協力したい

事業主

不動産会社

行政・商店街のみなさまのホンネ

  • 防災、ホームレス問題の視点から空き家物件の放置をなんとかしたい
  • シャッター街化を阻止し活気のある商店街にしたい
  • そうは言っても、商店街の雰囲気を壊したくない
  • 商店街にアパートやマンションは建てて欲しくない
  • 商店街の防火・耐震性能を向上させたい

事業主

行政・商店街

下矢印

課題の抽出

事業主、不動産会社、商店街、行政など、トチタテモノは現場に出向き、関わる全ての人の気持ちや要望、不安をヒアリングして課題を洗い出します。このケースでは、

  • 1. 建物の老朽化が激しく、改修にはお金がかかること(費用の課題)
  • 2. 物件の放置は危険であること(空き家問題)
  • 3. 商店街のシャッター街化が進み、入居者誘致が難しいこと(誘致力の課題)
  • 4. 商店街を活性化する必要があること(商店街活性化の課題)

という課題が抽出されました。事業主だけでなく、土地建物には、そこに暮らす人、関わる人の事情や要望もそれぞれ違います。その情報を並べて整理し、ベストな解決先を見出します。課題解決を多角的な視点からアプローチして発見することが、トチタテモノにしか出来ない部分なのです。

下矢印

リフレーミング

1つの物件の修繕には、たくさんの人の思いが集まります。立場が違えば望むことも違いますが、関わる全ての人が幸せになること――――-トチタテモノは事業主(お客さま)の利益を追求しながらも、周囲の人々にも利益やメリットが出る方法を考えます。それが、最終的には事業主の長期的なメリットにつながります。そのためにも、様々な視点からプロジェクトを見つめる必要があります。今回のケースではリフレーミングによって以下のようなポイントを提示することができました。

  • ・シャッター街化しているが、商店街としての魅力は十分にあること
  • ・商店街の雰囲気やコンセプトを無視した計画をすると、物件の資産価値が減ること
  • ・商店街の活性化につながる計画をすると、資産価値は上がっていくこと
  • ・若者や外国人など外部の人々を呼び込むことが商店街の活性化には必要なこと
  • ・海外メディアでも紹介される商店街なので、外国人旅行者向けの宿泊施設の需要は高く、検討すべきであること
  • ・宿泊施設としての改修ならば、切り分けの難しい2階部分も活用できること
  • ・宿泊施設としての事業計画ならば荒川区の産業振興の制度融資で金利がゼロになること
  • ・事業主はインフラ部分の改修費を負担し、入居者が自由に改装して良いとするならば、双方にとって魅力がある物件になること
  • ・トチタテモノの試算では、2年で投資した費用を回収できる物件になること
  • ・外国人宿泊者が商店街を観光することで、商店街への経済効果も期待できること

下矢印

コンセプト

「商店街の活性化につながる外国人観光客をターゲットにしたゲストハウスを作ろう!」というコンセプトのもと、地元不動産会社B社がゲストハウスを計画している人に出会い、紹介してくれたことでプロジェクトが一気に加速しました。それが、ゲストハウス『Sato sanʼs Rest』の経営者C子さんです。

それぞれの立場・役割のアクションプランもトチタテモノでは立案します。

(トチタテモノ)

各種申請代行、CM(Construction Management)方式による工事監理、近隣説明会資料作成、意匠設計、耐震設計、工事区分表の作成、見積・徴収・精査、セルフビルドにおける技術的助言

(不動産会社)

事業主と入居者のベストマッチング、金融機関の斡旋

(事業主)

耐震改修・防火性能向上への費用負担、入居者さまの希望に合わせたインフラ整備

(入居者さま)

事業計画作成、ブラインディング構築、セルフビルド担当

(行政・商店街)

補助金・制度融資の案内・経営勉強会の開催・建築指導課・保健所・産業振興課・消防との連携

通常の枠組みでは資産価値が下がってしまう

住民不在から30年。荒れ放題の状態

借地権の契約満了時に契約更新が無い時は借地人は地主に建物を時価で買い取ることを請求できます。(建物買取請求権)建物自体の価格は多くの場合は微々たるものですが、同時に多くの建物が耐応年数を超えており、用途・機能面においても経済的価値が失われている事が多いです。
解体する場合においても解体費用や固定資産税の問題があります。
敷地はシャッター街化しつつある商店街ではありますが、海外のガイドブックで紹介されているなどまだまだ街には魅力がありました。
店舗としてテナント付けが難しいからといって、更地にして建売業者へ販売したり、アパートへ建て替えなどを行うとシャッター街化に拍車をかけかねない状況です。
建て替える場合でも、改修するにしても枠組みから考えていく必要がありました。

地元を愛する不動産屋さんとの協力で光が見え始める

チームSato-san’s Rest プロジェクトの長が誕生!

地域との接点を多く持ち、街づくりについて長期的視点に立って地域に貢献する地域に密着した不動産屋さんはとても力強い味方です。
目先の利益ではなく長期的な視野を持っている方は街づくりにも積極的です。そんな不動産屋さんがゲストハウスをこの商店街で開業したい店子さんを紹介してくれた事でプロジェクトが一気に加速しました。

区議会でも改装への懸念が質疑されるほど、許認可に高いハードルが!

回を重ねるたびに応援してくれる方も増えていきました

区内では別件で廃屋を利用した簡易宿所が地域住民からの猛反発を受け、許認可を出した行政の対応について議会で討議され新しい条例が議論されている時でした。
Sato-san’ s Rest プロジェクトもその矢面に立たされます。
特にジョイフル三ノ輪商店街はアーケードになっているため、浮浪者が寝付いてしまう問題を長年抱えていただけに、廃屋に簡易宿所= 安宿という疑念が常に付きまとう地域だったのです。
また旅館業の許可には100m 以内に教育施設がある場合は環境が著しく損なわれる施設と判断されると許認可がおりません。建築的な安全性、施設の趣旨を地域説明会や関係各所に何度も説明して回る日々に奔走します。

全員がコンセプトを共有する事で生まれる新しい価値

1階はすべて共有スペースにする事でさまざまなイベントが可能に

Sato-san’ s Rest は商店街の活性の一助となる新しいゲストハウスです。このコンセプトを関係者全員が理解する事ではじめて新しい価値が生まれます。
建築計画、ロゴデザイン、Web、運営などの全てが統一したコンセプトの元でそれぞれが協力し合って初めて成就しました。思いはどんどん輪を広げていきます。行政は外国語のメニューや案内チラシなどに助成金を出だり、英語接客講座を行ったりしていますし、周りの商店街の品揃えも変化していきます。

建築的解決

  • 建物の基本構成は変更せず耐力壁を追加しました
  • 旅館業で必要となる設備要件を確保します
  • 1階の土間と茶の間はコンセプトから導き出された重要な場所となります
  • 建具や家具などは近所の方からの頂き物を流用しています
  • 解体、塗装、住宅部分などはセルフビルドで行っています

図面

Outline

プロジェクト名
Sato-san's Rest
用途
ゲストハウス
所在地
東京都荒川区
建築面積
52.35㎡
延床面積
98.06㎡
構造・規模
木造2階建て
竣工年
戦前
改修完了年
2015年9月
プロジェクト期間
3ヶ月
構造設計
SorA
施工
CM方式
写真撮影
安井慎治

Sato-san's Rest ギャラリー

Movie

コンタクト

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